心にグっとくる社会派ミステリーが読みたい――。そう思った時、ぜひ手に取ってほしいのが薬丸岳さんの作品。薬丸さんは、人の心に潜む闇や社会問題、罪を背負う人間を描くのが上手い。
今回はこれまで読んだ薬丸作品の中からおすすめしたい小説や新作、作風の似ている作家さんを紹介しよう。
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おすすめしたい薬丸岳小説6選
①一気読み必至な『神の子』のあらすじ
天才的頭脳と、絶望的な孤独。授けられたのは、それだけだった。
殺人事件の容疑者として逮捕された少年には戸籍がなく、一方で、知能検査ではIQ161以上を記録した──。
孤独な天才児と彼にかかわる人々とのドラマ、背後にうごめく呪われた陰謀。著者畢生の大河長編!(Amazonより引用)
『神の子』のネタバレと感想
本作は疾走感ある展開で、ページをめくる手が止まらなくなる。特に上巻は一気読み必至。
下巻を合わせて購入していなかった筆者は上巻を読み終えた後、慌てて書店へ走った。そのくらい続きが気になってたまらなくなる作品なのだ。
主人公の町田博史は学校にも行かせてもらえず、虐待を受けて育った恐ろしく知能が高い人物。天才でありながら人間味に欠けた彼の人生がどう変わっていくかを、ぜひその目で見届けてみてほしい。
②人間の脆さと強さを考えさせられる『虚夢』のあらすじ
通り魔事件によって娘の命は奪われた。だが犯人は「心神喪失」状態であったとされ、罪に問われることはなかった。心に大きな傷を負った男は妻とも別れてしまう。そして事件から4年、元妻から突然、「あの男」を街で見たと告げられる。娘を殺めた男に近づこうとするが……。人の心の脆さと強さに踏み込んだ感動作。(Amazonより引用)
『虚夢』のネタバレと感想
個人的に数ある薬丸作品の中で、最も重いと感じたのがこちらの作品。ラストで得た衝撃は、何年経っても忘れることはない。
人の心は自分自身が思っているよりも弱く、そして強い。そんな相反する感情が芽生える本作は誰かの命を奪うことの重さを痛感させられる1冊だ。
③映画版も必見な『友罪』のあらすじ
あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか? 埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり――。(Amazonより引用)
『友罪』のネタバレと感想
生田斗真さんと瑛太さんのW主演映画が話題にもなった本作は酒鬼薔薇事件を元に描かれた、社会派ミステリー。もしも、同僚が世間を震撼させた殺人犯だったら…?というのがテーマだ。
大切な友達が背負っている重い過去は、どう受け止めればいいのか。寄り添いながら一緒に苦しむことはできるのか。そんな問いを自分自身に投げかけたくもなるだろう。
④少年の言葉にハッとさせられる『Aではない君と』のあらすじ
同級生の殺人容疑で逮捕された14歳の息子。だが弁護士に何も話さない。真相は。親子は少年審判の日を迎える。吉川文学新人賞受賞作(Amazonより引用)
『Aではない君と』のネタバレと感想
なぜ、少年は黙秘しているのか。その謎が明らかになった時、読者の頬には涙がつたう。そして、加害者少年が口にする、ある問いが頭の中から消えなくなる。
あまりにも悲しい事件に隠された真相を、ぜひしっかりと見届けてみてほしい。
⑤あなたも必ず騙される『闇の底』のあらすじ
子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が2人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。『天使のナイフ』著者が描く、欲望の闇の果て。(Amazonより引用)
『闇の底』のネタバレと感想
本作は、薬丸さんの筆力に改めて驚かされる本格派ミステリー。犯人が明らかになった瞬間、あなたもきっと驚愕するはず。
正義なんて基準がない、曖昧もの。だからこそ、加害者ができる「本当の贖罪」とは何かと考えたくもなる一冊だった。
⑥『告解』のあらすじ
――罰が償いでないならば、加害者はどう生きていけばいいのだろう。
飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖のあまり走り去ってしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔――。失うものの大きさに、罪から目をそらし続ける翔太に下されたのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫である法輪二三久は、“ある思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。
『告解』のネタバレと感想
身近な事件を題材にした本作は、罪との向き合い方を多角的に考えさせてくれる。「ごめんなさい」では決して許されない罪は、一体どう償えばいいのか…。そんな問いを読者に投げかけてもいる。リアルな加害者心理と被害者心理の狭間で、あなたはどんな贖罪の形を見つけるだろうか。
新作『ブレイクニュース』のあらすじ
ユーチューブで人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌なども相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると以外な過去が見えてきて……。(Amazonより引用)
本作は長年、社会派ミステリーを描き続けてきた薬丸さんだからこそ生み出せた、デジタル社会の今こそ手に取りたい長編小説。
作中には日本に蔓延っている様々な社会問題や、それらに飲み込まれる人間の弱さが描かれており、登場人物たちの狡さが自分とどこか重なる。
一体、野依美鈴とは何者なのか―…。その謎が解けた時、あなたはきっと頬をつたう涙に驚く。
薬丸岳作品にハマったらチェックしたい「似てる作家」
石田衣良さん
『池袋ウエストゲートパーク』(文藝春秋)でおなじみの作家さんだが、泣ける作品も意外に多い。人の弱さや心の脆さを描くのが上手く、下記2冊は特に心に染みた。社会問題を描きつつも、希望があるラストなので明日への活力ももらえるだろう。
『北斗 ある殺人者の回心』の詳しいレビューはこちら
有川浩さん
恋愛小説も数多く手がけている有村さんは、すっと染み入る物語を描くのが上手い。薬丸さんとは、持っている温かさが似ているように思う。聴覚障がいを持つ女の子の恋を描いた『レインツリーの国』(新潮社)も良作だが、個人的には児童養護施設を舞台にした『明日の子供たち』(幻冬舎)がおすすめ。こちらは、あとがきまで感涙できる作品だ。
雫井脩介さん
雫井さんも言わずと知れた、社会派ミステリーの名手。とある事件を機に、平凡な家族の日常が一変してしまう『望み』(KADOKAWA)や元裁判官が私「殺人鬼を解き放ってしまったのか…?」と困惑する『火の粉』(幻冬舎)は数ある作品の中でも、ずっしりと心に響く。ミステリー要素が多めな作品を求めている方も満足できるはずだ。
自分の心と向き合ってみたい。薬丸作品は、そんな気持ちに駆られた時にもおすすめしたい。ぜひこれを機に、重厚な作品の数々を手にとってみてはいかがだろうか。