死×ファンタジーという独特の世界観を描き切り、読者を幻想的な世界へと誘う作家・恒川光太郎さんの小説には不思議な中毒性がある。
今回はこれまで読んだ恒川光太郎作品の中からおすすめしたい小説や新作、作風の似ている作家さんを紹介!異形の者が続々と登場する死ファンタジーをぜひ楽しんでみてほしい。
おすすめしたい恒川幸太郎小説7選
①イチオシな『雷の季節の終わりに』のあらすじ
少年は、世界を渡る旅に出た。新星・恒川光太郎の傑作異世界ファンタジー。
現世から隠れて存在する異世界・穏(おん)で暮らすみなしごの少年・賢也。穏には、春夏秋冬のほかにもうひとつ、雷季と呼ばれる季節があった――。著者入魂の傑作長編ホラー・ファンタジー!(Amazonより引用)
『雷の季節の終わりに』のネタバレと感想
数ある恒川光太郎作品の中でも、一番好きな小説。もっと評価されるべき本だと切実に思う。
人間界とは違う「穏」という世界が舞台。“風わいわい”という空想上の鳥が出てくる世界観なのに不思議と、すっと入り込める。
風わいわいは善にも悪にもなり、悪用すれば「穏」は怨になりえる。これはきっと人間界にも言えること。風わいわいは人間界でいう名誉や地位、お金などなのかもしれないなと思った。
②一度は読みたい名作『夜市』のあらすじ
妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた――。(Amazonより引用)
『夜市』のネタバレと感想
日本ホラー小説大賞受賞作。恒川光太郎作品の中で、一番知られている作品だと思う。本作には書籍名にもなっている「夜市」と「風の古道」の2作が収録されている。
詳しいレビューはこちらに書かせていただいたので、よろしければぜひチェックしてみてください。
ファンタジー嫌いでもハマる!ブラックな設定が斬新な恒川光太郎の『夜市』
③ダークファンタジーばかりの短編集『白昼夢の森の少女』のあらすじ
異才が10年の間に書き紡いだ、危うい魅力に満ちた10の白昼夢。人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くしたその先とは(「白昼夢の森の少女」)。巨大な船に乗り込んだ者は、歳をとらず、時空を超えて永遠に旅をするという(「銀の船」)。
この作家の想像力に限界は無い。恐怖と歓喜、自由と哀切―小説の魅力が詰まった傑作短編集。(Amazonより引用)
『白昼夢の森の少女』のネタバレと感想
何度も死に、記憶を失いながら蘇る男や19歳までしか乗ることができない巨大な銀の船を待ちわびる少女など、これぞ恒川ワールドという登場人物や設定が盛りだくさん!
どこかゾクっとさせられ、死を感じさせる物語が10編も収録されているので、初めて恒川光太郎作品に触れたい方にもおすすめ。
④救いがないラストがたまらない『秋の牢獄』のあらすじ
十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。
『秋の牢獄』のネタバレと感想
牢獄という書籍名にちなんで、表題作以外にも2作の“囚われる”短編小説が収録されている。個人的に好きなのは「神家没落」。日本中を移動する「神の家」から出られなくなってしまう男の話。どの物語にも救いがないからこそ、面白い。
⑤沖縄を舞台にした『月夜の島渡り』のあらすじ
鳴り響く胡弓の音色は死者を、ヨマブリを、呼び寄せる―。願いを叶えてくれる魔物の隠れ家に忍び込む子供たち。人を殺めた男が遭遇した、無人島の洞窟に潜む謎の軟体動物。小さなパーラーで働く不気味な女たち。深夜に走るお化け電車と女の人生。集落の祭りの夜に現れる予言者。転生を繰り返す女が垣間見た数奇な琉球の歴史。美しい海と島々を擁する沖縄が、しだいに“異界”へと変容してゆく。7つの奇妙な短篇を収録。(Amazonより引用)
『月夜の島渡り』のネタバレと感想
単行本『わたしはフーイー』の文庫版。本作の舞台は沖縄(琉球)。どこか神秘的なイメージがある沖縄と恒川光太郎氏の世界観はここまでマッチするのか…と驚かされた。
個人的には、どこか親近感が湧く妖怪が描かれている「クームン」が好き。この作品を読むと、大人になったことで見えなくなってしまったものはたくさんあるのだと改めて痛感させられる。
⑥夜市の次に読んでほしい!『草祭』のあらすじ
たとえば、苔むして古びた水路の先、住宅街にひしめく路地のつきあたり。理由も分らずたどりつく、この世界のひとつ奥にある美しい町“美奥”。母親から無理心中を強いられた少年、いじめの標的にされた少女、壮絶な結婚生活の終焉をむかえた女…。ふとした瞬間迷い込み、その土地に染みこんだ深い因果に触れた者だけが知る、生きる不思議、死ぬ不思議。神妙な命の流転を描く、圧倒的傑作。(Amazonより引用)
『草祭』のネタバレと感想
舞台は美奥という不思議な土地。全5編の物語を収録した短篇小説だが、読み進めるほど美奥の歴史や禍々しさが深まっていって、面白い。個人的には『雷の季節の終わりに』に次に好きな作品。
美奥で生きるものたちは犠牲になったものを慰霊し、今に感謝し、祈る。書籍名が「美奥」ではないのは「祭」という言葉に感謝や祈り、慰霊で祖先をまつるという意味があるからなのかもしれない。
⑦どんな願いでも叶うなら…?『スタープレイヤー』のあらすじ
路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる。
「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく。(Amazonより引用)
『スタープレイヤー』のネタバレと感想
ライトな内容かと思いきや、途中からちゃんとホラー要素が色濃くなってくる斬新な恒川光太郎作品。マキオが登場してから物語がどんどん壮大になっていくので、目が離せなくなる。何かを願うことの重みを考えさせられる一作。
ちなみに、読後は関連作の『ヘブンメイカー』(KADOKAWA)を手に取ってみるのもおすすめ。
高校二年生の孝平はバイクで事故にあい、気づくと見知らぬ町にいた。「死者の町」と名付けられた地で、孝平は他の人間とともに探検隊を結成し、町の外に足を踏み出す。一方、自暴自棄になっていた佐伯逸輝は、砂浜で奇妙な男に勧められクジを引くと―見知らぬ地に立ち、“10の願い”を叶えられるスターボードを手に入れる。佐伯は己の理想の世界を思い描くが…。(Amazonより引用)
人種差別や紛争など『スタープレイヤー』よりもダークな展開が多いが、その分、学ぶこともたくさんな良作。
新作『真夜中のたずねびと』はサスペンス要素が強め!
2020年9月に発刊された、恒川氏の最新作『真夜中のたずねびと』(新潮社)はこれまでとは少し違ったテイスト。
新作『真夜中のたずねびと』のあらすじ
次々と語られる、闇に遭遇した者たちの怪異譚。ゲストハウスでほんの一時関わっただけの男から送られてくる、罪の告白。その内容は驚くべきもので……(「さまよえる絵描きが、森へ」)。弟が殺人事件を起こし、一家は離散。隠れ住む姉をつけ狙う悪意は、一体、誰のものなのか(「やがて夕暮れが夜に」)。全五篇。(Amazonより引用)
連作短編集の本作はゲストハウスという現実感のある場所を舞台にしている時点で恒川作品としては珍しいなと感じるが、内容もこれまでの死ファンタジーとは一味違う。
だが、人間の心のどす黒さを描く筆力は健在。ゾクっとする人間関係や異常心理などが描かれており、希望が見えないラストだからこそ読後の余韻が凄い。
日常の延長線上にありそうな不気味さが詰め込まれた本作は、これまでの死ファンタジーとはまた違った恐怖を与えてくれる。
恒川光太郎作品にハマったらチェックしたい「似てる作家」
朱川湊人さん
乙一さん
京極夏彦さん
小野不由美さん
この世ではないどこかを覗いてみたい。そんな気持ちに駆られた時はぜひ、王道ファンタジーと共に背筋がゾクっとするホラーファンタジーも手に取ってみてはいかがだろうか。
ブログを拝見させていただきました。
私も恒川光太郎作品が大好きで、夜市から順番に読み進めている最中で、無貌の神まで読了したところです。ネットで恒川光太郎と検索すると、やはり夜市がおすすめに挙がります。私は夜市も好きですが、それ以上に草祭が好きです。他作品よりは評価されていないようなレビューが散見される中、このブログではかなり評価していただいて、なぜか私が嬉しくなってしまいました。
今後の恒川光太郎作品が楽しみですね。
追記
オススメ作家さんも紹介していただきありがとうございます。大変参考になりました。
こちらこそ、じっくりと見てくださり、ありがとうございます!
無貌の神も、よい作品ですよね!草祭り、個人的には名作だとずっと思ってきたので、同じような感覚の方に出会えて嬉しいです☺!
これからも恒川作品、楽しみですよね!☺
いえいえ、こちらこそ、おすすめ作家さんのところも見てくださり、ありがとうございます☺
良い作品や作家さん、ぜひとも私たちにも教えてくださいね~☺