『黒い家』はこんな人におすすめ
・人間の怖さにゾクっとしたい人
・ドロドロした小説が好きな人
・サイコパスな人物が登場する小説が好きな人
身の毛もよだつ怪談話は、人間界とは違った世界を描いているから、怖くもあり、面白くもある。けれど、『黒い家』(貴志祐介/KADOKAWA)を手に取ると、考えさせられる。もしかしたら、1番怖いのは人間なのかもしれない…と。
本作は、第4回ホラー小説大賞で大賞を受賞した人気作。1999年には映画化され、大竹しのぶさんの怪演や「この人間には心がない」というキャッチコピーが注目を集めた。
『黒い家』のあらすじ
生命保険会社で保険金の支払い査定に忙殺されていた若槻慎二はある日、顧客である菰田重徳という男から、家に来るよう呼び出された。
重徳に連れられ、菰田家に入ると、ひどい悪臭が。なんと、部屋の中には重徳の妻・幸子の連れ子の首つり死体があった。初めは自殺だと思ったが、死体発見時に重徳が目の前の遺体よりも自分の反応を気にしていたように感じたため、若槻はこの事件に疑問を抱く。
その後、菰田は連日、支店にやってきては保険金の支払いを執拗に急かしてくるように。同時期、若槻の家には毎晩、無言電話がかかってくるようになった。
ほどなくして、この一件は自殺と判断され、生命保険が支払われることとなったが、菰田夫婦にはまだ2件の契約が残っていたため、若槻は幸子の身を案じる。
【感想】菰田重徳の正体と「黒い家」の真実にドキドキハラハラ
古川
一体、菰田重徳という男は何者なんだろう。その疑問は、本作を読み進めるたびに解決するどころか、どんどん膨れ上がっていく。そして、悪臭とどす黒い感情が漂う「黒い家」には、どんな秘密が隠されているのか気になり、ページをめくる手が止まらなくなる。
菰田の狂気は、目に見えない類のもの。だからこそ、より恐ろしい。なんでもない日常の中にじわじわと、菰田という恐怖が入り込んでくる描写にゾっとする。「恐怖がしのびよってくる」とは、きっとこういうことを指すのだ。
加速していく恐怖は物語の全体像が明らかになった後、ピークに。個人的にはラスト数十ページは生唾を飲むほどドキドキし、若槻の身に迫る危険をまるで自分自身が体感しているような感覚になった。
特に、若槻が菰田家に侵入した後のストーリー展開は秀逸。黒い家に蔓延る「不気味」の正体が明らかになり、戦慄の先にさらなる戦慄が待ち受けているという点が面白かった。
なお、本作が好きな方は五十嵐貴久氏が手掛けている『リカ』(幻冬舎)シリーズにもハマると思う。
気になる方は、こちらも要チェック。ぜひ、人間の恐ろしさを心に焼き付けてみてほしい。