『亡者の家』はこんな人におすすめ
・小説でゾクっとしたい人
・ノワールな小説が好きな人
・サイコパスな人物が登場する小説が好きな人
最近、福澤徹三作品に浸るのが楽しい。希望と絶望を上手く混ぜ込みつつ、裏社会を綴る福澤氏の小説は単にドロドロしているだけではないからこそ、奥深くて面白い。
そんな福澤氏はアウトロー小説だけでなく、ホラーサスペンスも多く手掛けており、読者を恐怖の渦に引きずり込んでいる。
中でも、『亡者の家』(光文社)は人間について考えたくなる一冊。
本作は人間の強さや弱さ、怖さを痛感させられる奥深い作品だ。
『亡者の家』のあらすじ
消費者金融で働く諸星雄太は、融資をした勢田紀幸が金を返さず、連絡もとれなくなったため、自宅へ集金に行くことに。
呼び鈴を押すと、現れたのは勢田の妻・由貴子。聞けば、勢田は4日前から家に帰ってきていないという。
結局、諸星はこの日、集金ができなかったため、由貴子に友人から借りた金で返済するよう約束させ、週明けに再び勢田家を訪れることにした。
由貴子は、妙な色気がある女性。恋人がいる身でありながら、諸星はこの日以来、由貴子に心惹かれるようになってしまう。
約束の週明け。由貴子から「友人に金を借りられなかった」と聞いた諸星はまたしてもその日の集金を諦め、後日、再び勢田家を訪れた。すると、目に飛び込んできたのは勢田の娘・美穂の首つり死体。
【感想】長編小説並みの「練り込まれたホラー」がココに!
古川
物語のキーポイントは、勢田の妻・由貴子。何とも言えない色気を醸し出す彼女には見た目からは分からない“もうひとつの顏”がある。
それに驚かされるのはもちろんだが、本作が与える恐怖はまだまだある。特に、後半で次々と明らかになる真実は恐ろしい。そして、その先に待ち受けるまさかの恐怖に唖然とさせられるのだ。
家をモチーフに人間の怖さを描いたホラーサスペンスと言えば、貴志祐介氏が手掛けた『黒い家』(KADOKAWA)が有名。
だから、同作を読破した方の中には「似通った内容なのでは…」と思う人もいるかもしれない。だが、本作にはまた違った“人間の恐ろしさ”が巧みに描かれていて、背筋が凍る。