裏社会を駆けるクライムアクション『もぐら』

『もぐら』はこんな人におすすめ

・街中を舞台にしたミステリーが好きな人
・裏社会系が絡んだ物語が好きな人
・ハードなアクション小説が好きな人

凄絶な過去を背負いながら、悪を嫌悪し続け無類の強さで突き進む。たとえ自分がどうなろうとも――。

『もぐら』(矢月秀作/中央公論新社)は渋谷を舞台に、主人公がドラッグの密売グループを追っていくハードアクションミステリーだ。

『もぐら』あらすじ

かつて警視庁組織犯罪対策部に所属していた影野竜司。彼は潜入捜査の失敗によって凄絶な経験をしていた。

組対部に所属していた現役の頃、竜司は同僚の宇田桐とともにドラッグを扱っているとされる裏組織、志道会に潜入捜査を試みる。潜入に成功し、組織の信用を得てドラッグの流通ルートを掴んだが、もう少しというところで正体が発覚してしまい潜入捜査は失敗。同僚の宇田桐を失い、さらに家族までもが手にかけられてしまう。

竜司は抑えきれない怒りをそのままに、単身、志道会に乗り込み、たったひとりで組織を壊滅させ、志道会会長の首を警察に持ち帰る。そして竜司は殺人罪で逮捕され投獄されることに。

十年後、竜司は警察には相談できない事件を請け負い、圧倒的な強さで手段を問わずに解決するトラブルシューターとして、闇社会で名を馳せる。そして、いつしか“もぐら”と呼ばれ恐れられる存在になっていくことに。

もぐらが渋谷で暗躍する新興勢力を追う

ある時、竜司は大学生の南修輔から「妹の亜弥助けてほしい」という依頼を受ける。妹は不良グループに拉致されて売春をさせられているとのこと。竜司は不良グループのもとへ乗り込み、亜弥を助け出すことに成功。

しかし、竜司はその後、不良グループの後ろ盾となっていた暴力団組織、七和連合が同日に同じ場所で謎の勢力に壊滅させられたことを知らされる。竜司は街の怪しげな動きから、助けた兄妹が関係していると見て連絡を取ろうとするが、兄弟は完全に行方をくらませてしまうのだった。

裏社会の勢力図が変わろうとしている渋谷を舞台に、竜司が危険を顧みずたったひとりで裏の新興勢力を追っていくハードアクションストーリーだ。竜司の向こう見ずな性格と圧倒的な強さに惹きつけられていく。

【感想】圧倒的な戦闘力を誇るもぐら

望月真琴

ここから先はネタバレを含むため、書籍を読んでからお楽しみください。

元警視庁組織犯罪対策部に所属していた竜司は格闘能力も高く、銃器類の扱いにも精通している。また、たったひとりで犯罪組織に立ち向かうという、向こう見ずな性格ながらも自信にあふれた男だ。そして、圧倒的な戦闘力で次々と敵を倒していくのである。

犯罪集団をつぶすことのみに全力を注ぐ竜司

竜司は依頼を受ける際の金額や、トラブルの大小にかかわらず、困っている一般人を助ける。そして、依頼主の身元も問わないことにしている。そのため、竜司を私利私欲のために利用しようとする者もあらわれるが、竜司は経緯はどうであれ犯罪集団を潰せればそれでいいと思っているのだ。

裏社会の組織によって人生を狂わされた竜司は犯罪集団に対しての思いが人一倍強い。法律をまったく気にすることなく根本的な善悪の判断で動く竜司の姿は、読んでいて非常に痛快である。

竜司の圧倒的な暴力性

竜司は犯罪集団相手には全く情け容赦をかけない。どこへでも単身で乗り込み、圧倒的な暴力で犯罪集団を完膚なきまでに叩きのめしていく。一般人相手には分け隔てなく普通に接するが、犯罪集団を相手にしたり、危険にさらされると完全に戦闘モードに切り替わる。

状況によってはやりすぎるほどに暴力性を発揮する竜司の姿はこの物語の見どころのひとつだ。理性的ではない一面を持つ危うさが竜司の魅力でもある。
圧倒的な強さに垣間見る危うさ
本作は圧倒的な力を持つ主人公が悪に立ち向かうといった話ではあるが、ありきたりな勧善懲悪の物語ではない。渋谷という街を舞台に、裏の組織と、超法規的なトラブルシューターという表に出てこない者同士の抗争が描かれているクライムストーリーだ。また、圧倒的な強さを持ちながら、どこか危うさをはらんだ竜司の生き方が刺激的で惹きつけられる。

『もぐら』シリーズは他作品もおすすめ

『もぐら』はシリーズ化しており、他作品もおすすめです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)