俺は一体何を運ばされているのか―…詮索NGなコンテナの中身とは?小説『うなぎ鬼』

『うなぎ鬼』はこんな人におすすめ

・人間が怖い系のホラー小説が好きな人
・スリル感を得られる小説を探している人
・裏社会系の小説に興味がある人

背筋にじっとりと張り付くような恐怖を楽しめる『うなぎ鬼」(高田侑/角川書店)は、知る人ぞ知る名作ホラー小説。

一度耳にしたら忘れられない、なんともユニークな書籍名の本作は肝心の中身もインパクト大。読後、心にずんと鉛のようなものが残る。

『うなぎ鬼』のあらすじ

借金を抱えて首が回らなくなった倉見勝は「千脇エンタープライス」という会社に身請けされた。

社長の千脇から言われたことは、ただひとつ。俺の意志のもとに動け―…。
殺しだけは絶対にやらないし、させない。そう言う千脇を信じ、勝は余計な詮索はせず、怪しげな仕事に手を染めていた。

そんなある日、勝は黒牟(くろむ)という寂れた町にある「マルヨシ水産」で臨時の運送を請け負ってほしいと千脇に頼まれる。その会社は千脇の弟が経営する、うなぎの養殖場を備えた水産加工工場

運送費は弾むが、60kg相当にもなるコンテナの中身を詮索するのは厳禁。「知りたがるな、聞きたがるな」と念押しされて荷物を運ぶうちに、勝は中身がもしかしたら人間の死体なのかもしれないと考えるように。やがて、勝の心は暴走し、暗い未来を引き連れてきてしまう…。

【感想】黒牟という町に隠された秘密とは?

古川

ここからはネタバレを含むため、作品を読んでからお楽しみくださいませ。
しばらく、鰻は食べれそうにない…。きっと、本作を読み終えたら多くの人がそう思うはず。なぜなら、本作は妙なリアリティがあるホラー小説だからだ。日本のどこかで、本当にこんなことが起きていそうだと思えてしまう。

一体、勝が運んでいるものは何なんだろう…。そんな謎以外にも、作中には多くのハラハラがいたるところに散りばめられていて、目が離せない。

例えば、どこか怪しい雰囲気が漂う黒牟という町には児童買春などの様々なよからぬ噂が…。だから、読み手は禍々しいオーラを醸し出す黒牟にどんな秘密が隠されているのかより気になり、どこかきな臭い「マルヨシ水産」の従業員たちの本性も知りたくなる。

絶望に向かう男の人生は必見!

なお、本作はホラーらしいゾクっと感をふんだんに散りばめつつも、ラストでは他者の見方を考えさせられる描写が織り交ぜられている点が面白い。ただ怖い作品で終わるのではなく、勝の人生を通して、自分自身の生き方を見つめ返したくなるのだ。

また、勝は千脇が行う売春ビジネスを手伝う中で、ミキというひとりの女性と関わるようになるのだが、この女の登場により、物語はさらにブラックな方向へ傾いていく。容姿端麗で、自分に気があるように振舞うミキとの出会いにより、勝の人生は一変。その先には、ホラーすぎる結末が待ち受けている。

果たして黒牟は本当に危ない町なのか、そして勝の運命はいかに…。読み進めるたびにドキドキが加速する本作は、「本当の自分」に気づくきっかけを与えてもくれる名作だ。

『うなぎ鬼』は漫画で読むのもあり!

ちなみに本作はコミック化もされているので、小説はちょっと…という方は漫画を手に取ってみるのもおすすめ。


落合裕介さんが描き出す黒牟も、実に魅力的。自分の身にも起こり得そうな恐怖に、ぜひ思いっきりゾクっとしてみてほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)